1996年~2003年度群馬大学教育学部講義「社会科教育法」及び2013年~2014年度白鴎大学教育学部講義「社会科概説Ⅱ」「ゼミナール」の受講生が、郷土かるた作りに挑戦しました。 以下、講義を担当した本会副理事長、原口の想いです。
私は、将来社会科の授業を担う教育学部生を対象に、地域学習の意義と方法を学ぶ一手段として、郷土かるた作りに取り組みました。 実際のかるた作りに使えるのは、半期講義時間の一部、学生にとってかなり忙しいスケジュールになります。
でも、題材調査から調査発表、題材選定、読札・絵札作りといった総合的な作業を通して、一人一人が郷土の人々や事象と直接出逢い、学生同士互いの学びを交換しあいながら、知っているようで知らない身近な地域に目覚めていく…
学生たちにとっては大変な作業の連続だけど、このステップを経ることで、人と土地との関係について考え、また、将来子どもの前に立つ一人の人間として、他者や世界に対して意識的になってくれればいいなぁと考えて実践しました。
以下は受講学生の感想の一部です。
【1998年度受講 群馬県出身 S.Nさん】 「ふるさと」のことなんか一度も考えたことがなかった。当然のようにあり、当然のように温かい。この授業を受けることで、その当然というもののありがたさを教えられた気がする。〈中略〉 課題と言われるとレポートを書くのがいやな僕だけど、このレポートは次から次へに書きたいと思える。ふるさとのことを考えるだけで、こうも温かい気持ちになれるなんて自分でも不思議だ。 「都心のふるさとがなくなりかけている」と授業で聞いたとき、「どうなっちゃうんだろう」と思った。「ふるさと」というのは、自分を見失いそうな時に自分を再認識させてくれるものだと思う。それがなくなったら……。考えただけでも悲しくなった。 最後のかるた大会。あの時間はとても楽しかった。友達の笑顔、生まれた町のことを取り扱ったかるた、心から久しぶりに笑った。僕も「ふるさと」を作り出せる授業を目指して頑張りたいと思った。 【1999年度受講 宮崎県出身 M.Kさん】 〈前略〉私の班は、名所担当でした。群馬の名所は数え切れないほどあるうえ、どれもが有名なので、9つに絞るときには本当に苦労しました。苦労したと言えば、絵札作りです。忠実にその場所を再現させて絵札に描くのはとても難しかったです。 かるた作りを楽しく感じ始めたのは、あの「上毛大橋」がきっかけです。上毛大橋以外の資料は簡単に手に入るのに、なぜか上毛大橋の資料だけは何もわからずじまいでした。唯一わかったことは、群馬県の管轄であるということでした。それで最終手段として、県庁に電話して話を聞きに行くことにしました。 正直言ってわざわざ県庁まで‥という気持ちがありましたが、職員の方のお話を聞いて、上毛大橋の謎がどんどん解けてきて、大げさな言い方かもしれないけど感動しました。普段何気なく通っていただけに、感動も2倍でした。この経験で、調査することの大切さ、楽しさ、そしてそれによって何かかが発見される喜びを改めて実感しました。これはもっといろんな人に知ってほしい、味わって欲しいと強く感じました。 私は、かるた作りのまとめ役をやっていたので、自分の班以外のかるたにも触れることが多くありました。各班が調べてきた内容の発表の時は、本当に知らないことばかりでした。自分の班の内容でさえも初めて知ることばかりで、このかるた作りで群馬のことをかなり知ることができたと思います。〈中略〉 私は、将来宮崎の教員になったら、宮崎県の郷土かるたを作りたいと本気で考えています。それくらい、郷土かるたは、私に深い感動を与えてくれました。 『新しい群馬のかるた第1集 平成ぐんまかるた1998・1999』 (日本郷土かるた研究会・原口美貴子編、2007.3)より抜粋 |
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短時間の作業であり、読み句や絵の表現に十分指導が行き渡らなかった面はありますが、各地のふるさととしばし真剣に対峙した学生の制作風景と作品(読み札)をお楽しみ下さい。
群馬大学教育学部中学校社会科指導法 「群馬のかるた」題材選考の様子(1999) |
同左 |
白鴎大学教育学部社会科概説Ⅱ 「小山かるた」題材発表の様子(2014) |
白鴎大学教育学部ゼミナール 小学校での「小山かるた」遊びの様子(2014) |
白鴎大学教育学部ゼミナール 「小山かるた」作り仕上げの様子(2014) |
同左 |